Windows RT 8.1とSurface RT

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Surface RT

2013年の夏のはじめにWindows RTが搭載されたSurface RTを購入しました。

Windows RTとは?

Surface RTにはARM版のWindowsであるWindows RTが搭載されていました。

ARMはiOSやAndroid等のスマホやタブレットで採用されているCPUで低消費電力が特徴です。

しかし、Windows 8やWindows 7といったIntel CPUをターゲットとする通常のWindowsのソフトは当然動きません。

Windows RTではWindowsの膨大なソフト資産を利用できませんでした。

そんな大きなデメリットがあるにもかかわらず、Surface RTがARMを採用した理由は当時のIntelの低消費電力CPUではまともなパフォーマンスが出なかったからだと思われます。

それに対してライバル(とマイクロソフトは考えていたかもしれない)のiPadやAndroidはサクサクのパフォーマンスで動いてバッテリも長持ちするわけです。

Windowsでそれらライバル(と……略……)に対抗するためにはARMを採用するしかなかったのかもしれません。

ただ、Intelの低消費電力CPUであるAtomがかなり改善され、Windowsをまともなパフォーマンスで動かせるようにようになりました。

これなら通常のWindowsのソフトが動かないWindows RTなんていらないよね……となってしまったわけです

Windows 8は消費電力が大きかった(過去形に注意)IntelのCPUで動作するのに対し、Windows RTは消費電力が少ないARM CPUで動作します。

iOS(PhoneやiPad)や多くのAndroidもARMで動作しています。

マイクロソフトはWindowsで長時間駆動を実現させるためにはARMへの対応が必要だと考え、Windows RTを開発したのだと思います。

しかし、Windows RTのリリース後に消費電力の低いIntel CPUが登場し、通常のWindows 8でも長時間駆動が可能になりました。

そのため、Windows RTに存在意義を見出すのは難しくなってしまいました。

OS単体では販売されない

通常のWindowsと異なり、Windows RTのOSのみを購入することはできません。

必ずメーカーのWindows RT端末にWindows RTがプリインストールされた形で販売されます。

Windows RT 8.1

Windows RTがプリインストールされたWindows RT端末は無償でWindows RT 8.1にアップグレードできました。

しかし、Surface 2以外にWindows RT 8.1がプリインストールされた端末が発売されることはありませんでした。

従来のWindowsアプリはインストールできない

CPUがARMのため、従来のWindowsアプリはインストール/実行できせん。

Windows RTに標準添付のアプリ(Office 2013 RTなど)とWindowsストアからダウンロードするストアアプリだけが動作します。

ストアアプリとは全画面で動作するタッチ操作が前提のアレです。あの魅力に乏しいストアアプリしかインストールできないということです。

これではWindowsという名前がついていることに疑問を感じますね。

アプリをインストールできないことはメリットにもなる

しかし、企業などでは個人で勝手にソフトをインストールされたくないというニーズがあります。

RTでない普通のWindowsであっても管理上の理由でアプリのインストールを禁止している会社はありますよね。

そのため、アプリがインストールできないことはメリットにもなり得ます。

また、コンピュータウイルスにも強いということになります。

この従来のアプリをインストールできないという一見、デメリットにしか思えない仕様のために逆にWindows RTの導入を検討した会社はけっこうあるのではないでしょうか。

このメリットは現在ではWindows 10のSモードに引き継がれています。

Office 2013 RT

Office 2013 RTとは Office 2013 Home and BusinessのARM版(Windows RT版)です。

Windows RTにはこのOffice 2013 RTがプリインストールされています。

Home and Business と同様に次のオフィスアプリが含まれています。

  • Word
  • Excel
  • PowerPoint
  • OneNote
  • Outlook

Office 2013 RTの制約

しかし、Office 2013 RTではOffice 2013の次の機能が利用できません。

  • マクロ
  • アドイン
  • フォーム
  • カスタムプログラム
  • OneDrive Sync統合
  • 数式エディタ3.0
  • Lyncファイルのダウンロード

とくにマクロが利用できないのは人によっては致命的です。

基本的にOffice 2013をARMでビルドし直すだけでOffice 2013 RTができると思うのですが、わざわざマクロを利用できなくした意図はまったく理解できません。

Windows RTはCPUがARMのため、カスタムプログラムは当然利用できません。

マクロはRTでもサポートできるはずですが、セキュリティ上の理由から利用できなくしていたのでしょうか。

BitLocker

Windows RTは意外にもBitLockerを標準サポートしていました。

BitLockerとはSSD等の内部ストレージとUSBメモリ等などの外部ストレージを暗号化する機能です。

Windows 8.1 Proでない無印Windows 8.1ではサポートされていなかったにもかかわらず、なぜかWindows RTではサポートされていました。

例えば、Proでない無印Windows 8.1のノートPCを紛失したとします。

いくらWindowsのログインパスワードをかけていてもPCを分解されて内部ストレージを取り出されれば、中のデータは見られてしまいます。

しかし、BitLockerで暗号化できるWindows RTかWindows 8.1 Proであれば、そんな心配はいらないということです。

このBitLockerのサポートもタブレットやパソコンの紛失リスクがある会社にとっては魅力だと思われます。

FlashとIEが使えたタブレット

Windows RTをタブレットとして見た場合、タブレットとしても使い勝手はまあはっきり言ってiPadには遠く及びませんでした。

しかし、FlashとIEが使えるタブレットはWindowsタブレットだけであり、ARMではWindows RTだけでした。

「タブレットに移行したいが社内システムがFlashやIEに依存していて……」なんて会社には響いたかもしれません。

Surface RTを購入した理由

通常のWindowsアプリが使えないWindows RT搭載のSurface RTをなぜ購入したのか?

「WindowsなんだからもちろんWindowsアプリは動くだろう」と勘違いした、

という理由ではありません(そういう悲惨な人もいると思いますが)。

専用キーボード込み900gで純正のマイクロソフトOfficeがまともに使えた

からです。

Surface RTにはOffice 2013 RT(Home and Business 2013 RT)がプリインストールされていました。

Office 2013 RTとはOffice 2013のARM版(Windows RT版)で、Word、Excel、PowerPoint、OneNote、Outlookが含まれています。

マクロとアドインが使えないという制約がありましたが、それを除けばOffice 2013とまったく同じに使うことができました。

ご存じのとおり、Office 2013は軽いソフトでなくモバイルで使うためには高性能な重いノートPCが必要でした。

軽量PCでOfficeを使おうと思ってもなかなかまともに動きません。

しかし、Surface RTではそれができました。

私は外出先でマイクロソフトOfficeを使うことが多いため、とても重宝しました。

Windows RT端末

Windows RTを搭載した端末は、ASUS、NEC、マイクロソフトから発売されました。

ASUS

台湾のASUS社はモバイルキーボードドックにタブレット単体を装着するとクラムシェルとして利用できるVivoTab RT TF600Tを販売していました。

しかし、2013年8月にASUSのCEOがWindows RT端末の製造から撤退する意向を明らかにしました。

また、ASUSだけでなく、業界全体の評価としてWindows RTは失敗との見解を示したとのことです。

前述したWindows RTに存在意義を見出すのが難しい状況では当然の判断と言えるかもしれません。

NEC

NECはWindows RTを搭載したPC-LY750JW LaVie Yを販売していました。

液晶部分が360度回転してタブレットとしてもノートPCとしても使えるコンバーチブルタイプと言われているジャンルの製品です。

PC-LY750JW LaVie Y

PC-LY750JWはキーボードの取外しが不可能で画面サイズも大きいため、タブレットよりもノートPCのように使う場面のほうが多い人に向いていたと思います。

NECはASUSのようにWindows RTから撤退すると表明していないようですが、新製品を出さないところを見ると推して知るべしでしょう。

マイクロソフト

以前はマイクロソフトのSurfaceには2種類の系統がありました。

Surface ProとProのつかないSurfaceです。

2代目までのSurfaceはSurface Proと明らかな違いがありました。

世代 OS 付属Office
Surface Pro 初代 Windows 8 Pro Home and Business 2013
Surface RT 初代 Windows RT Home and Business 2013 RT
Surface Pro 2 2代目 Windows 8.1 Pro Home and Business 2013
Surface 2 2代目 Windows RT 8.1 Home and Business 2013 RT
Surface Pro 3 3代目 Windows 10 Pro Home and Business Premium
Surface 3 3代目 Windows 10 Home and Business Premium

OSがWindows RTだったのです。

Windows RTとはスマホやタブレットでよく使われるARM CPU用のWindowsです。

パッと見は通常のWindowsですが、通常のWindowsアプリは一切利用できずWindows RT専用アプリが必要です。

そんなものを誰が買うのか???……という世間の予想どおり、通常のWindowsを搭載したSurface Proと違ってWindows RT搭載のSurfaceはまったく売れなかったようです。

私は買いましたけどね……

マイクロソフトはそれでも2代目となるSurface 2を発売しましたが、やはり「通常のアプリが使えないWindows」は難しかったようです。

さすがに3代目のSurface 3では、OSがWindows RTではなく、通常のWindowsに変更されてしまいました。

Surface RT

Surface RTはマイクロソフトが開発/販売した初めてのタブレットでした。

もともとマイクロソフトはOSをPCメーカーに提供するのみで、自身でタブレットやPCを販売することはしていませんでした。

Surface 2

Surface 2はWindows RT 8.1がプリインストールされた唯一の端末でした。

ARM版Windowsの絶滅

実は大昔からARM対応のWindowsというのはありました。

Windows Embedded CEです。

Embeddedという名前の通り、組み込み機器向けのWindowsです。

Surface RTにはこのWindows Embedded CEをもってくればよかったと思うのですが、なぜか新規にWindows RTが開発されました。

そしてWindows RTの登場以降、Windows Embedded CE関連のニュースは聞かなくなりました。

マイクロソフトとしてはWindows Embedded CEを新しいWindows RTで置き換えたいという思惑があったのかもしれません。

しかし、Windows RTは登場当初、マイクロソフトのSurface RT以外にASUSのVivoTabやNECのLaVie Y等に採用されたものの、Windows RT 8.1になるとASUSもNECも撤退し、採用しているのはマイクロソフトのSurface 2だけという状況になりました。

そして次のSurface 3ではついにWindows RTでなく、Windows 8.1が搭載されました。

誰がどう見てもWindows RTは失敗なのでしょうが、RTの登場以降、話を聞かなくなったWindows Embedded CEもWindows RTの道連れにされて絶滅したようです。

RTでない本物のWindowsでも軽いPCが作れるようになった

Windows RTの登場後にCherry Trailという高性能なAtomプロセッサが登場しました。

このプロセッサはARMのような低消費電力でWindowsを動かすことができました。

この新しいAtomを採用し、RTでない本物(?)のWindowsを搭載しているにもかかわかわらず、Surface RTより軽いPCが登場しました。

これにより、ARM版のWindowsであるWindows RTの存在意義はなくなってしまいました。

Windows on ARMとして復活

そんな絶滅したかに見えたARM版Windowsですが、何と「Windows on ARM」として復活しました。

Windows on ARMは「Dynamic Binary Translator」によりx86プログラムをARM命令に変換して実行できます。

つまり、「通常のWindowsアプリが使えない」という致命的な欠点を克服したということです。

しかも、スマホのような常時LTE接続に対応し、たとえ外出先でもインターネット接続を気にする必要がありません。

Windows on ARMはSurface Pro 9のMicrosoft SQ 3モデルに搭載されています。

ちなみにアップル社のM2 MacやM1 MacはIntelからARMへの移行に見事に成功しています。

WindowsとMacのARM移行はどこで差がついたのでしょうか。慢心、環境の違い……

コメント

  1. NECのガジェット大好き野郎 より:

    こんにちは NECむのLavieYのユーザーです。と言っても数年来放置ですけど。このたび久しぶりに電源入れてアップデートしてみたら
    半日かけて更新されました。主に何がどうなったんでしょうか。お暇な時にでもお教えいただきたく。ブラウザとかはそのままですよね
    。やたら新しい日付でWINRTの記事が見つかったので喜々としてコメントしてしまいました。よろしくお願いいたします。

    • 管理人 より:

      RTのユーザー、しかもSurface以外のユーザーからコメントいただけて嬉しいです。
      アップデートでWindows RT 8.1 Update 3が適用されたのでしょうか。
      RT 8.1とUpdate 3の差分はWindows 10のようなスタートメニューの追加「だけ」だったと思います。
      見た目がWindows 10風になりますが、ブラウザがEdgeになるわけでもなくも、Universal Windows Appsが動くようになるわけでもありません。。。

  2. タウロ より:

     私も、全く同じ理由でサーフェス2を買いました。
    今でももちろん現役で使っています。買った当初から充電やバッテリー、起動するときは少し不安定な
    ところもありましたがオフィスを十分に使えるところが素晴らしいと思います。
     まだまだ、大切に使おうと思っています。USB端子があるし、本当によいと思います。
    ただ、満充電しても、スリープには弱いなぁ・・・と思っていますが、出かける前に充電しておけば
    いけます!

  3. 匿名 より:

    windows RTで最近youtubeが使えなくなった。残念ver UPしてほしです。

  4. button より:

    そうなんですか?
    サブモニタにでも出来ないかと貰ったのですが
    普通のWindowsのようには使えないのでしょうか?

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